近年、医療・介護業界は急速にデジタル化が進展しています。革新的な技術の導入により、医療診断や治療、介護サービスの提供がより効率的になり、患者や利用者の生活の質が向上すると期待されています。本記事では、医療・介護業界のデジタル化について、その進展と課題について詳しくみていきましょう。
まずは、医療・介護業界で取り入れられているデジタル技術について解説していきます。
電子カルテの導入
近年では、従来の紙ベースのカルテから電子カルテへの移行が進んでいます。電子カルテは医療情報の効率的な共有を可能にし、診断や治療の品質向上をサポートしています。
紙で管理しなくても良いので紛失などのリスクを軽減でき、事務スタッフや看護師の業務軽減にもつながるでしょう。カルテには重要な個人情報も記載されているため、管理には厳重なセキュリティが敷かれていました。しかし、人の目だけではどうしても管理しづらい部分もあるでしょう。
電子カルテでは膨大な患者のカルテをオンラインで一括管理できるため、紛失などのリスクも少なく、必要な時にすぐ表示できるのも大きな魅力です。
また、AI技術の導入により、電子カルテからデータ解析や予測が可能になり、より正確な診断や治療計画が実行できるようになったのもメリットの1つです。
テレメディシン
テレメディシンは、患者と医療専門家が遠隔で医療相談や診療を行う方法です。ビデオ通話や遠隔モニタリング技術の進歩により、患者は自宅から医療サービスを受けることが可能になりました。
遠隔で診察ができるようになったことにより、患者は病院にわざわざ足を運ぶ手間を省けるのです。高齢の方や障害を持っている方にとって通院は負担になるケースもあるため、遠隔で診察が受けられるのは大きな発展だと言えるでしょう。
ヘルスケアアプリの普及
スマートフォンの普及とセンサー技術の進歩により、多くのヘルスケアアプリが開発されました。これらのアプリは、個人の健康状態をモニタリングし、日常生活の中での健康管理をサポートしてくれます。
心拍数や歩数、睡眠の質などのデータを収集し、ユーザーに健康情報やアドバイスを提供するため、自己管理能力の向上にもつながるでしょう。
医療・介護業界ではデジタル化が進んではいるものの、デジタル化がもたらすリスクもあります。
プライバシーとセキュリティの問題
医療情報は非常に個人的で機密性が高いため、デジタル化に伴うプライバシーとセキュリティの問題は深刻な課題となっています。患者の個人情報や医療データが不正なアクセスやハッキングのリスクに晒される可能性があるため、セキュリティーの面においては厳重に管理しなければいけません。
デジタルシステムのセキュリティを強化し、厳格なアクセス制御や暗号化技術の導入が求められるでしょう。
高齢の方がデジタル要素を使いこなすのが難しい
デジタル化が進むことで革新的で効率的な医療・介護サービスを提供できるようになりますが、誰もがデジタル要素を使いこなせるわけではありません。特に高齢の方は機械やアプリなどの利用方法を完全に理解するのが難しいこともあるため、利用格差が生まれることもあるのです。
利用格差が生まれないためにも、高齢の方でもアプリやデジタル要素を使いこなせるようにサポートしなければいけません。
誤診リスク
医療のデジタル化において、技術の信頼性と誤診リスクは重要な懸念事項です。AIや機械学習などの技術を活用する場合、アルゴリズムの正確性や予測能力、データの品質に影響されます。
能力が劣っていたり、間違ったデータが登録されたりすると、誤った診断や治療計画が行われる可能性があるので、デジタル技術に依存するにはリスクも伴うのです。少しでも誤診リスクを避けるためには、品質管理とデータの正確性、専門家と技術者の協力が欠かせないと言えるでしょう。
デジタル化が普及することで医師や看護師だけではなく、患者の負担も減らせます。しかし、デジタル化にはリスクも伴うので、対策もしておかなければいけません。ここからは、医療・介護業界のデジタル化に伴うリスクへの対策方法を見ていきましょう。
まず1つ目に考えられるのが、強固なセキュリティ体制を整えることです。アクセス制御を強化したり、データを暗号化したりなど、ハッキングされないように体制を整えておく必要があります。
患者の個人情報や大切な企業情報などが住まれると、悪用される危険性があり、万が一情報が流出した場合は病院や介護施設の信頼性も危ぶまれるでしょう。
また、セキュリティーシステムを取り入れる場合は定期的に監視し、いつでも最新のものにアップデートしておくことが大切です。
次に誤診リスクの対策です。誤診リスクを避けるためには、品質管理とデータ管理が重要なカギを握っています。
医療・介護業界ではAIや機械学習も積極的に取り入れられていますが、必ずしも最適な答えを出してくれるわけではありません。登録した情報等が間違っていれば、誤った治療方法や診断などを行うリスクがあるのです。
対策方法として考えられるのは、十分に検証を重ねることです。AIや機械学習の訓練データの品質や信頼性を確認し、様々なケースでの予測や診断の正確性を検証する必要があります。
また、医療専門家と技術者の密な連携も重要です。医師や介護士はAIや機械学習などの専門家ではありません。あくまでも利用者側なので、デジタルシステムを取り入れる場合は、専門家の知識と経験を反映させながら、技術の開発・導入を行うことが重要なのです。
まとめ
医療・介護業界はまだアナログ要素が強いと言われていますが、近年ではデジタル化が進んでいる傾向にあります。デジタル化が進むことで業務の軽減につながったり、予算の削減になったりなどのメリットが得られます。
しかし、デジタル化が進む反面、ネットから個人情報などが流出するリスクが高まったり、AIや機械学習に依存したりなどのデメリットもあるので、しっかり対策しなければいけません。
今後も医療・介護業界ではデジタル化が普及していくことが考えられますが、リスクに対する対策も必須だと言えるでしょう。