2024年度の介護報酬について1・59%引き上げによって、介護業界や日本社会にもたらす影響とは?

医療介護

介護報酬の引き上げの概要

改定の背景

2024年度は3年に一度の介護報酬改定がおこなわれます。日本が直面している高齢化社会に対応するための重要な措置の一環です。この改定は、6,000円の補助金給付や処遇改善加算の一本化など、注目の多い改定となっています。

介護報酬改定は、介護サービスの質の向上、介護職員の待遇改善、そして経済的な持続可能性を確保することを目的としています。特に、介護職員の処遇改善は、労働環境の質の向上と人材不足問題の解決に焦点を当てています。
24年以降の介護業界や日本社会にどのような影響を与えていくのでしょうか。

1.59%引き上げの詳細

2024年度の介護報酬改定における1.59%の引き上げは、具体的には介護サービス提供事業者への介護報酬の増加になります。今回の改定議論では、物価高騰にともなう介護事業者のコスト増が考慮されており、更には、首相官邸が掲げている「持続的な賃上げ」が検討されました。

介護職員の賃上げを行うには介護報酬のプラス改定が必要ですが、報酬のプラス改定には保険料や自己負担増の国民負担の増加が見込まれ歳出改革に逆行する形になることから厚労省と財務省の激しい攻防となり、最終的には首相が両者の主張の間を取る形で折り合いました。

介護報酬1.59%引き上げは過去の介護報酬改定の中で2番めに高い改定率です。この報酬引き上げのうち0.98%分は賃上げ対応分、ここりの0.61%が介護サービス分となります。

改定によって何が起こるのか

月平均6,000円の補助金

2023年の春闘の全業界の賃上げ率に対し、介護業界の賃上げが低水準だったことから、2024年報酬改定の施行までの間(2024年2〜5月)介護職員の収入の2%程度の補助金、月平均6,000円を支給することとなりました。支給要件は2022年の補助金と同じになると想定されています。

処遇改善加算の一本化

今回の介護報酬報酬改定では、賃上げ分が多くを占めており、「介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」を一本化し、新たな「介護職員等処遇改善加算」を創設することが大きな変更点となっています。この新加算は4段階(Ⅰ~Ⅳの4段階の加算区分)に分けられることが決定しています。
新加算への完全移行は2025年度からとなり、2024年度は準備期間との位置づけで、円滑移行のための各種経過措置を行う予定です。

新加算の4区分の考え方は、最も基本となる「新加算Ⅳ」をベースに、介護職員の基本的な待遇改善・ベースアップ等を評価します。「新加算Ⅲ」は、「新加算Ⅳ」の要件を満たした上で、資格や経験に応じた昇給の仕組みの整備を評価します。「新加算Ⅱ」では、「新加算Ⅲ」の要件を満たした上で、総合的な職場環境改善による職員の定着促進を評価します。最も加算率の高い「新加算Ⅰ」は、「新加算Ⅱ」の要件を満たした上で、事業所内の経験・技能のある職員を充実させることを評価します。

訪問介護の加算率を現在の加算と対応し、例として紹介すると、以下のようになります。

新加算Ⅳ

介護職員処遇改善加算(Ⅱ)+介護職員等ベースアップ等支援加算=12.4%

新加算Ⅲ

介護職員処遇改善加算(Ⅰ)+介護職員等ベースアップ等支援加算=16.1%

新加算Ⅱ

介護職員処遇改善加算(Ⅰ)+介護職員等特定処遇改善加算(Ⅱ)+介護職員等ベースアップ等支援加算=20.3%

新加算Ⅰ

介護職員処遇改善加算(Ⅰ)+介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)+介護職員等ベースアップ等支援加算=22.4%

介護事業者・職員からの視点

介護事業者・職員の希望

介護事業者・職員としては、今回の1.59%の引き上げは十分だとは判断することは難しく、希望としては3〜5%前後の改定を望んでいたのではないかと想定されます。
しかし、厳しい財政状況の中、診療報酬を上回る改定となったことは、政府の介護に対する一定の配慮があったことも想像できます。
今回の報酬改定は、前述したように過去2番めに高い介護報酬改定であることは、非常に意義深い改定であるということも認識し、介護事業者は厳しいながらも経営を好転させ職員の処遇改善に務める責務があると再認識しなければならないのではないだろうか。

給与の変化

多くの介護職員が一番気になるのは、この一本化により職員の給与に変化があるかどうかということですが、実際にはどうなりそうかというと、加算額の配分方法についてはこれまでのような規定を減らし「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員へ重点的に配分することとするが、事業所内での柔軟な配分を認める」という意見が社会保障審議会で出されているので、実質的な給与アップにつながるのではないかと想定されています。特に経験や技能のある職員への重点配分が可能になると考えられます。ただし、直接介護を行わないケアマネジャーや管理者、事務員などは加算の対象外であり、これらの職種に対する待遇改善は別途検討される可能性があります。

社会的影響

今回の介護報酬改定で日本社会にどのような影響をもたらすか考察したいと思います。

高齢者ケアの質の向上

介護報酬の引き上げにより、職員給与の向上に繋がります。今回の報酬改定では、介護職員の処遇改善が大きな目玉となっており、職員の給与向上により質の高い人材の育成確保が促進され、高齢者へのケアの質を向上させることが期待されます。これにより、介護サービスの提供者は、より効果的かつ質の高いケアを提供することが可能になり、結果として高齢者の生活の質が改善されることが予想されます。
しかしながら、この程度の報酬引き上げでできる職員処遇の改善では、より質の高い人材の育成確保は難しいとの現場の声も聞かれます。

介護産業の経済的発展

介護報酬の改定は、介護産業の経済的発展を促進し、新しい雇用機会の創出や産業の拡大を促します。これにより、経済全体の活性化に寄与し、社会の経済基盤の強化に繋がると期待されます。しかしながら、こちらも上記と同様、報酬引き上げが十分ではなく、介護業界の経済的な発展には繋がりにくいのではないかとの視点があることも事実です。

まとめ

2024年度の介護報酬改定は、介護業界や日本社会に多大な影響を与える重要な変化です。介護職員の給与と待遇の向上、介護サービスの質の改善、そして経済的な発展が見込まれます。これらの改定により、高齢者へのケアの質が向上し、介護業界の人材不足の解消と業界全体の活性化が期待されます。この改定は、高齢化社会への対応として、長期的に見て日本社会にとって重要なステップとなるでしょう。

最後に

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