目次
はじめに
日本は急速な少子高齢化が進行している国の一つです。この大きな社会的課題の中で、介護施設の需要は年々増加しています。しかし、その一方で、介護職員の慢性的な不足という深刻な問題が存在しています。公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査」によると、介護職の離職率は14.1％、人手不足を感じている介護事業所は63％に上っており、今後も人材確保の難しさが予測されています。
この記事では、そんな介護業界に革新をもたらす「週休3日・10時間勤務制」の取り組みについて、詳しく解説します。
介護業界の課題
人材不足の背景
介護は専門性の高い仕事です。充分なスキルを身に付けるまでには一定の期間が必要とされ、過酷な労働環境とスキル獲得が容易ではないことから、一人前の介護士としてのスキルを身につけるまでの間に多くの職員が職場や介護業界そのものを去ってしまいます。現場の厳しい労働環境が、高い離職率を生む大きな要因となっています。
業界の悪循環：新人の教育とベテランの離職
新人が新人を教える状況が続くと、質の高いサービスを提供することが難しくなります。この悪循環を断ち切るためには、働きやすい環境を整え、経験豊富な職員が長く働けるような制度が求められます。
週休3日・10時間勤務制の導入背景
介護施設の運営上の制約
介護施設は、定員を超えた利用者募集ができません。これは売上に限度があるということを意味し、職員の給与を上げることが難しい状況を生んでいます。この制約の中で、どのようにして優秀な人材を確保し、定着させるのかが大きな課題となっています。
売上と人件費のバランスの課題
人件費を抑えつつ、職員に満足な給与と労働環境を提供することは、経営にとっての重要な課題です。このバランスを取るための新しい働き方として、「週休3日・10時間勤務制」が注目されています。
週休3日・10時間勤務制の実施方法
現場の不安の取り除き方
週休3日制の導入には、職員からの不安の声が上がることが予想されます。これを解消するために、事前の説明会を重ね、新しい制度の目的とメリット、そして実際の運用方法について徹底的に説明します。また、導入後も定期的なフィードバックを取り、改善点を見つけ出す体制を整えます。
シフトの工夫と業務内容の見直し
週休3日・10時間勤務制を成功させるためには、シフトの工夫が必要です。例えば、モーニングケア・ナイトケアが重なるピーク時には多くのスタッフが出勤するよう、需要に合わせた柔軟なシフト作りを心がけます。また、業務内容も見直し、無駄な作業を削減し、効率的な業務運営を目指す必要があります。
人手の最適化と効率化
週休3日制を導入すると、一人当たりの一日の労働時間が長くなり各シフトの職員が重複する時間が増えます。週休2日制と同じ職員人数でシフトを回すことになると、自ずと一日の職員比率が少なくなることとなります。
では、職員が少なくなった分をどこで調整するか。それは、業務の効率化を図り、必要な人手を最適化する必要があります。具体的には、業務の自動化や効率的なシステムの導入、業務の再編などを行い、職員一人一人がより生産的な時間を過ごせるように改善することが必要です。
働き方改革の実際の効果
年間休日の増加と有給取得率の向上
週休3日制の導入により、職員の年間休日が大幅に増加します。これにより、職員のメンタルヘルスが保たれ、有給休暇の取得率も向上。これは、長期的に見て職員の満足度向上と定着率の向上に寄与します。
業務効率の最適化と時間外労働の削減
週休3日・10時間勤務制では、労働時間が長いため、その間に業務を処理することが可能となります。これにより、時間外労働が大幅に削減され、残業が減り、職員の健康を守ることができます。シフト重複部分は給与も2倍発生するが、時間外労働時間の大幅な削減があり、経営側には大きな負担がなく実施ができました。
離職率の大幅な改善
新しい働き方が導入されることで、職員のワークライフバランスが改善されます。これにより、長期間働き続けられる環境が整い、離職率が大幅に下がることが期待されます。
シフト重複のメリット
10時間勤務になることで、早番・遅番・夜勤などとの勤務時間の重複が発生します。この重複する時間をモーニングケアやナイトケアの時間に当てることで、業務の効率化が図られるとともに、勤務が入れ替わりではなくなったことで申し送りに取れる時間ができ、記録主体の申し送りが対面でしっかり時間を取って行えるようになります。
やはり、文章主体の引き継ぎでは細かなニュアンスを伝えるのに不十分と感じていた職員も多く、10時間勤務のメリットと捉えられています。
職員の声：導入後の変化
休日の増加と体調の改善
週休3日制の導入により、職員は自身の健康管理により時間を割けるようになり、体調を整え、より高いパフォーマンスで業務に取り組むことが可能になったとの声が多いです。
仕事の効率化と人間関係の向上
週休3日制の導入は、職員同士のコミュニケーションの質も向上させました。限られた時間での効率的な業務運営が求められる中で、チームワークが強化され、職場の雰囲気が改善しました。
家庭とのバランスの取りやすさ
週休3日制は、家庭との時間も重視する現代の働き手にとって、大きな魅力となっています。子育てや家庭の事情に対応しやすい環境が整い、職員の生活の質が向上しています。
メンタルヘルスの向上
週休3日制の導入により、職員は自身の心の健康にも気を使えるようになりました。ストレスの軽減が図られ、仕事への意欲も向上。これが高品質なサービスにつながっています。
スキルアップの機会
週休3日制は、職員にとって自己啓発の時間も確保しやすくなりました。これにより、資格取得やスキルアップの機会が増え、プロフェッショナルとしての成長が促されています。
施設での導入とその課題
導入のハードル
週休3日制の導入は、組織の体制や文化を大きく変える必要があります。これには、経営層の強いリーダーシップと、職員一人一人の理解と協力が不可欠です。
継続的な改善と評価
新しい制度の導入後も、継続的な改善と評価が重要です。定期的なミーティングを設け、職員の声を反映させながら、より良い働き方を追求していく体制が求められます。
上辺だけの取り繕いの問題
週休3日制の導入は、他の施設でも注目されていますが、中には名ばかりの改革で、実際の労働環境が改善されていない場合もあります。真の働き方改革を実現するためには、徹底した組織改革と文化の醸成が必要です。
意識の統一の重要性
新しい働き方を導入する際には、経営層だけでなく、現場の職員一人一人が改革の意義を理解し、一丸となって取り組むことが重要です。これにより、持続可能な改革が実現します。
必要人員数
10時間勤務を行うということは、職員の重複時間が増え、一日の職員比率が少なくなることです。ある程度職員配置数の多い、最低職員人数が若干減っても現場の稼働が滞らない施設で行うことが望ましいです。
今後の展望
政策との連動
持続可能な介護業界の発展のためには、政府の政策との連動も重要です。労働環境の改善を後押しする政策が進められることが、今後の大きな展望となります。
まとめ
介護業界における「週休3日・10時間勤務制」の導入は、職員の働きやすさを大幅に向上させ、サービスの質も高める可能性を秘めています。これからの時代に求められる新しい働き方の形として、この取り組みは大いに注目されるでしょう。持続可能な改革を進め、日本の介護業界が健全な発展を遂げるための一石となることを期待します。
最後に
今回の記事では、最新の介護施設での働き方情報をご紹介させていただきました。
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